ケープハイラックスの基本情報
便利な糞尿
現代人で薬を服用したことがない人というのは少ないのではないでしょうか?
ただ、使用している薬が何からできているかまで知っている方は少ないと思います。
例えばインフルエンザの特効薬「タミフル」の原料になっているのは「ダイウイキョウ」という植物だったりと聞いたことのない植物が使われていたりします。
このように薬の多くは植物が原料になっていますが、歴史的には動物も薬として使われています。
サイの角など、多くは眉唾で乱獲されたりと言ったことが多いのですが有用であるとされているものもあります。
ケープハイラックスがその一つです。
ケープハイラックスは多くが何世代にもわたり同じ場所をトイレとします。
これは「ため糞」と呼ばれるのですが南アフリカではなんと5万年以上前のものもあるそうで、この糞尿が年月をかけて結晶化したものがヒラセウムといい、てんかんや痙攣発作に効くとされて、南アフリカでは民間薬として使用されてきました。
また、このヒラセウムは香料として使用されたり、火薬として使用されたりとこれまでに使用されてるようです。
排泄物は肥料に使われることが多いですがこういった使われ方もあるんですね。
ケープハイラックスの生態
分布
南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエ、マラウイ南部の各地に分布しています。
サバンナ地帯の岩場、イネ科の生える草原、低木林などに生息して、砂漠や半砂漠のような乾燥した環境を好みます。
食性
草や樹皮のほか、木の葉や実、果実や花、地衣類、苔類など、季節に応じて60以上もの種類の植物質を食べることが知られていますが、主にイネ科の植物が主食となっています。
動物園では、ニンジン、サツマイモ、リンゴ、バナナ、コオロギなどが給与されています。
形態
イワダヌキ目、イワダヌキ科に属するケープハイラックスについてご紹介します。
体長は30~55cm、体重は3~4.5kgほど。
体には、短い灰色の毛が密に生えており、背中側より腹側の方が色が薄くなっています。
見た目はネズミやタヌキのようで、骨格はサイに近い構造ですが、足底全体を地面に付ける構造のために分類上はゾウに近いという、さまざまな哺乳類の特徴を併せ持った不思議な動物です。
こんなハイラックスだからこそ特徴がいっぱいあります笑
見た目でわかりやすいものだと上顎の発達した牙でしょう。
彼らは草食動物なのに、まるで肉食動物のような牙を持っています。この牙は門歯であり、肉食動物の牙(犬歯)とは異なり、肉を裂いたり、骨を砕いたりなどの用途ではありません。
草食動物は門歯自体が消失していたりといったことも多いのに、ここまで鋭くなるというのも面白いですね。
また、この牙は根元に「歯髄腔」と呼ばれる空洞があり、一生伸び続けます。長すぎると不便なため、枝やエサを食べる際や下顎に生えている2本の歯の間を通すことで研いでいるとも言われています。
ちなみにヒトの永久歯の根元の空洞は成長が止まっているため閉じています。(成長途中の歯には、ちゃんと空洞があるようです。)
しかし、こんなに見た目が鋭い牙ですが、オス同士の闘争で使う程度で外敵と戦うときの武器にはならないそうです。
また、彼らは蹄のような平たい爪を持っています。指は前足に4本、後ろ足に3本あり、蹄に似た半円状の平爪が生えています。
爪は後ろ足の第2指だけが長い鉤爪になっており、毛繕い用の爪として使っているそうです。
もう一つ見た目でわかりやすいものに「感覚毛」があります。
ケープハイラックスの体は2~3㎝くらいの比較的短い毛で密に覆われていますが、背中や腹部などに6~8㎝くらいの長い毛がところどころで放射状に伸びているのがわかりますか。
これが感覚毛です。
この感覚毛はネコのひげと同様に、触れたところを感じ取ることができるセンサーの役割を持っており、岩の裂け目など狭い場所に入り込んでも、隙間の広さや自分の体がどのような状態になっているかまで判断できるようになっていると言われています。
そのほかにもケープハイラックスには、住処とする岩場で暮らすことに適した体の作りが備わっています。その一つが足裏の作りです。
彼らの足裏には、ゴムのように弾力性のある柔らかい肉質の細かい突起が数多くあり、硬い岩場を移動するのに適しています。
しかも足裏には汗腺が多くあり、活動するときにはその汗腺から汗が多く分泌され滑り止めとなることで、垂直に近い切り立った岩壁でも楽々と移動することができます。
もう一つ特徴的な構造として背中には「臭腺」という匂いを出す器官があります。
これはオスにもメスにも背中の中央の白っぽい毛で囲まれた部分にあり、彼らはここから黄色の液体を出します。
オスは発情期にはこの臭腺付近の毛を逆立て、この分泌物の匂いでメスにアピールし、メスは分泌物の匂いを生まれた子供に付けることで、我が子を認識しています。
そのため、赤ちゃんに十分なにおいがついていないと、母親は自分のを認識することができず、育児放棄をするようになるそうです。
このようにさまざまな特徴を持っているため、分類に関して数多くの研究者を悩ませた動物。
それがケープハイラックスです。
手がかかる方が可愛いと言いますがその通りかもしれませんね。
行動
ケープハイラックスは別名がロック(岩)ハイラックスというように、サバンナ地帯の「岩場」にある割れ目などを巣穴として利用し、1頭のリーダーのオスに複数のメス、そして子供たちからなる数頭から80頭ぐらいまでの群れを作って生活しています。
そんな彼ら、他の哺乳類に比べて体温調節の能力が劣るため、早朝や夕暮れ時などの気温の低いときには岩の上で日向ぼっこをして体温を保温している姿が、日中の暑い時は岩場の日陰で体を冷やすなどしている姿がよく見られます。
生きるために必要な場所である岩場に住み着くようになったんでしょうね。
また、群れで暮らす彼らは、仲間同士のコミュニケーションとして鳴き声を使っており、親が子供を呼ぶときは、鳥が囀るような『ピリリピリリ』という声、外敵が現れたときの警戒音や相手を威嚇するときは『キャッキャッ』という鋭い声で鳴きます。
こういった鳴き声は現在21種類が分かっています。
繁殖
一夫多妻で、妊娠期間は212~240日間程。一回に普通は2~3子を出産します。
小型の草食獣としては妊娠期間が長く、ハイラックスの祖先が今よりはるかに大型であった時代の名残ではないかと考えられています。
生まれたばかりの子どもの体重170~240g程だが、生後2日でジャンプもすることが出来、生後2週間程で固形物を食べはじめる。
雌雄ともに3年程で親と同じ大きさになり、、寿命は飼育下では15年程度、野生では10年程度と言われています。
ケープハイラックスの仲間
その他の種は現在順次更新中です。もうしばらくお待ちください。
人間とケープハイラックスの関係
保全状況
分布が広く生息数も安定しているので、現在のところは絶滅のおそれも低い種であるとして、国際自然保護連盟(IUCN)発行のレッドリストでは軽度懸念になっています。
飼育する動物園
絶滅危惧種のケープハイラックスですが、日本では現在15ヶ所の動物園で見ることができます。
現在展示されている動物園を紹介します。
特筆すべき動物園は安佐動物園。
なんとこれまでに600頭以上を繁殖・飼育し、国内の多くの動物園に譲渡されている国内トップの繁殖地。
展示場も他の動物園と比べ非常に大きく、個体数も多いのでケープハイラックス推しには天国!
団子のように集まって温まってる姿は非常に癒されるので冬場は一見の価値ありです。
下記にケープハイラックスを飼育している動物園をまとめましたのであなたの素敵な動物園ライフにご活用ください。
動物園 | 所在地 |
---|---|
群馬サファリパーク | 群馬県富岡市 |
狭山市立智光山公園こども動物園 | 埼玉県狭山市 |
上野動物園 | 東京都台東区 |
夢見ヶ崎動物公園 | 神奈川県川崎市 |
よこはま動物園ズーラシア | 神奈川県横浜市 |
高岡古城公園動物園 | 富山県高岡市 |
いしかわ動物園 | 石川県能美市 |
長野市城山動物園 | 長野県長野市 |
楽寿園 | 静岡県三島市 |
富士サファリパーク | 静岡県裾野市 |
京都市動物園 | 京都府京都市 |
神戸どうぶつ王国 | 兵庫県神戸市 |
長崎バイオパーク | 長崎県長崎市 |
安佐動物公園 | 広島県広島市 |
余談
あまり表立って取り沙汰されることのないケープハイラックスがアニメで登場したことがあります。
それが2020年放送の「ヒーリングっど♡プリキュア」の30話「キャラがバラバラ?動物園の休日」という回。
そう、天下のプリキュアww
作中では少年が、うさぎでもネズミでもないちょっと珍しい動物と紹介していました。
映像作品に動物園が出てきたらどうしてもモデルどこだろう?とか考えてしまいます。
ハシビロコウもいるし上野動物園が有力かな?とか笑
みなさんもアニメや映画などに動物園が出てきたら検索してみると楽しいかもしれないですよー。
まとめ
ケープハイラックスって見た目で損してる気がするんですよね。
ネズミっぽい見た目でその辺にいそうだからこそ中身があまり知られない。
それって人にも言えることでやっぱり見た目のイメージは大事なんだなと改めて考えさせられます。
見た目で侮っていたらダメだな〜
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